空中をヘリコプターのように飛行する空中ドローンが、世界にあらゆる可能性を提示してから数年が経ちました。安定かつ無人で空中飛行できるドローンは、レジャーから建築、人命救助に至るまで、さまざまな分野で利用が進んでいます。世界から注目されているドローンですが、その活躍の場は水中にも触手を伸ばし、河川から運河、海に至るあらゆる活動での活用に注目されています。
近年注目され始めたROV(水中ドローン)ですが、すでに50年の歴史を持っています。それらは、軍用をはじめ、沈没船調査など、主に専門的分野を中心に利用されてきました。現在の水中ドローンは、小型化と軽量化が進み、空飛ぶドローン同様、一般ユーザーにも手の届く存在になっています。
広がり続ける水中ドローンの需要
現在、水中ドローンは一般ユーザーからプラントやパイプライン等の大規模プロジェクトに至るまで、さまざまな分野シーンで活用が進んでいます。ハイスペックな水中ドローンでは、深さ300メートル程度まで潜れるものもあり、もともとは一般向けに販売を開始したにもかかわらず、ビジネスで活用したいという企業からの問い合わせが殺到し、実際、効果的に利用されているのが現実です。そのように今後も注目が集まる水中ドローンの需要を、ご紹介いたします。
<メディア>
水中の映像撮影は、昔からメディア制作で非常に重要の高い分野です。メディアでは、これまでダイバーによる水中撮影が行われていましたが、無人で安全、しかも電源の問題が解消された状況下では、ダイバーよりもはるかに潜水時間が長くなる利点を生かし、現在はこのような撮影にも水中ドローンが活用が進んでいます。
<漁業>
水中ドローンは現在、漁業の現場での活用シーンの広がりを見せています。一口に漁業といっても、その内容や活動は非常に多岐に渡ります。そのさまざまな現場において水中ドローンの需要が高まっているのです。たとえば、定置網漁で重要な役割を果たす魚礁ブロックを沈める作業ですが、これまでは従来では漁師の勘で行っていたものを、水中ドローンを活用することで、安全かつ正確な位置に沈めることに寄与しています。経験豊富な漁師の勘は今でも貴重なノウハウですが、傾斜の大きい海底など、一口に不安定な状態で設置してしまうケースもあり、それらをドローンの先進的な技術で補填するケースが増えてきています。また、養殖業での需要も高まりを見せており、養殖業においてはこれまで、ダイバーにより、点検や魚の死骸除去などの作業が行われるのが一般的でしたが、水中ドローンを活用することにより、特に作業環境が厳しくなる冬場での作業効率が大幅にアップしました。
<建築>
建築や土木業界でも水中ドローンの需要は高まってきています。橋梁工事や水中にある建造物の点検、ダムの点検・工事などにおいては、従来ではダイバーが行うのが常識でしたが、水中ドローンを活用するシーンが増えてきています。水中ドローンを活用することで、ダイバーの負担を減らすことができ、また今まで人間が潜れず作業が困難だった深さでの点検や海底地形の調査なども行えるようになりました。また、ダイバーの安全を確保する目的でも水中ドローンは利用されています。
<船体調査>
造船業の現場からも需要は多く、外壁をはじめとする船体調査やスクリューの点検などに利用されています。
<海難救助>
空飛ぶドローン同様、遭難者の捜索や、遭難現場周辺の海底の調査など、海難救助の現場でも水中ドローンの利用がますます進んできています。
そのほかにも、河川や湖沼の水質調査や、パイプや冷却水槽の内部など人間が潜るには危険な環境における調査など、水中ドローンの需要は、それらの従来は注目されなかった分野へも広がりを見せています。
水中ドローンの未来
このように様々な分野での利用の広がりを見せています水中ドローンですが、今後も引き続き、水に関するあらゆる分野からの需要が見込まれています。資源開発分野や海底ケーブルの敷設に関わる作業での利用など、水中ドローンは、そのテクノロジーの発達と共に、安全性と効率性の両軸の特性を活かして、これまでは考えられなかった新たなレベルへと進化し、私たちの生活を更に豊かにしてくれることでしょう。
すでに現在は水深1000メートル程度まで潜れる性能を持つ商用水中ドローンも開発されています。これだけテクノロジーが発展した21世紀の現在においても、宇宙空間と同じく、海底は私たち人類にとって未知の世界です。今後ますます水中ドローンが活用されることで、海の理解が深まり、持続可能な社会に向けた活動に大きく貢献できると考えられています。ますます水中ドローンの利用が広がれば、操縦士の需要も増加していきます。水中ドローンの未来は今後ますます広がりを見せていくものと思われます。
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